森見登美彦著、『恋文の技術』を読んで手紙を書く。

 森見登美彦の著作である『恋文の技術』はとても魅力的な作品です。
小説の構成としては全編をとして主人公である「守田一郎」が書いた手紙を読む形となっています。
最初は主人公とその周りの登場人物達を、この構成で表現できるのかと疑問に感じます。
また手紙だけで物語を展開出来るものなのかと不安に感じます。
しかし、読み進めていくうちに手紙であるからこそ主人公の思考の癖や性格がよく分かることに気づきます。
それだけでなく手紙の書き方、言葉遣いで主人公と登場人物達の関係性がとても分かりやすく示されていることにも気づきます。
この小説は是非とも学生にも社会人にも読んでいて欲しいと思います。
主人公は大学院生の男子学生です。彼も多くの学生と同様に社会に出ることに恐怖し、学生であり続ける事を願っています。
そんな彼が春から秋にかけての文通を通して何でもない毎日に一喜一憂するのです。
この小説を読んでいると時折訪れる将来への恐怖に絶望し、アホな事を考えて楽しくなるこの「守田一朗」に深い共感を覚えると思います。社会人が読むと時間に追われなかった学生時代の気楽さや何とも言いがたい楽しさというものに思いを馳せることになると思います。
この小説は誰もが感じる普遍的な感情を手紙という表現で見事に表現しています。
そしてこの小説最大の魅力は、読後に自分も手紙を書きたくなるというところです。